「私とAさんどっちが大事？」の深層心理

 人と比べたって仕方ない……、頭ではそう分かっていても、思わずこんな言葉を人にぶつけてしまったり、心の中でグルグル考えてしまったりすることってありませんか。

「私って、社内でどのくらい大事に思われてるんだろう？」、「私とAさんって、どちらが評価されているんだろう？」


今回の“オンナ語”
「私とAさんって、どちらが評価されているんだろう？」



実は、ある心理学の実験によると、女性は人と比べられることを嫌う傾向（相対評価回避傾向）が高いといわれているんです。比べられることが怖い。自分は自分、他人は他人と思いたい。

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でも、だからこそ、個人にとってものすごく重要な問題については、ほかの人の評価に対して、異常なほどに神経質になってしまうところがあるんですよね。「回避したい、だからこそ、すごく気になる」。つまりこの心理は、「怖い、だからこそ、覗いてみたい」という、よくある不思議な心理的パラドックスです。

だから、何かがきっかけで急に「Aさんと比べてどうなの！？」などと口をついて出てしまうのは、女性の思考メカニズムからいうと、ごくごく自然なこと。大切な問題だからこそ、ムキになってしまう。そこの心の機微を分かってもらえずに、「ヒステリックだ。君は幼稚だ」なんて思われると、とても悲しくなってしまいますよね。

私たちが特に敏感になるのが、「不平等感（unbalance feeling）」を心に抱いたときだといわれています。仕事の負担量がほかの人よりも大きいんじゃないか、自分の頑張りが正当に評価されていないんじゃないか、そういう不安を感じたとき、女性の心は男性の数倍もいら立ち、周囲のちょっとした言動にも鋭くなるといわれています。

どうしてそうなってしまうんでしょうね。例えば、あるプロジェクトの仕事分担で不平等感を感じたとき、多くの男性は、「これは何とかして平等にしてもらわなければ」という、問題焦点型の思考をします。それ以上のことはあまり考えません。

しかし私たちは、もっと飛躍して考えてしまうんです。例えば、「私はいつでも損な役回りの女だわ」「Ａさんはズルイ。私ってお人よしでバカみたい」という、パーソナルかつ個人的な感情。

仕事をどう動かすかという問題以上に、自分のポジショニングの確認のほうに、どうしても女性は目を光らせがちになってしまうみたいですね。

全面的な味方は、シンプルに共感してくれる

でも、そういうことを社内の人にぶつけたって、「そんなことない、Aさんも頑張っているんだよ」なんて言われるだけで、かえって寂しい気持ちになってしまうもの。同僚や上司に訴えても、あまり期待どおりの励ましは返ってこないと思います。

こういう問題は、仕事上の利害関係のない友人や家族、ボーイフレンドなどに話すほうがスッとすることが多いものです。彼らはあなたの全面的味方ですので、必ずこう言ってくれるでしょう。「そうなの？ 大変だね。ひどいよ。かわいそうだよ」と、シンプルに共感してくれます。そういう人を探してください。

そうやって認めてもらえると、心は急に穏やかさを取り戻すことが多いものです。「いやいや。Aさんだって大変だし、私がラクをしたこともあるし……」という修正作業が、心の中ですみやかに行われやすくなる。いつまでもAさんと比べてヒネている自分、ストレスばかりため込んでいる自分が、ちょっとバカバカしくなってくることも意外と多いですよ。

植木理恵

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<span class="bpprofile_position">1975年大分県生まれ。心理学者。臨床心理士。慶応大学で講義をおこなうとともに、都内心療内科にて心理カウンセラーとして勤務。『ウツになりたいという病』（集英社）、『フシギなくらい見えてくる!本当にわかる心理学』（日本実業出版社）、『「ココロのため息」がスーッとなくなる本―元気が出てくるメンタル・ギブの法則』（大和出版）など著書多数。「ホンマでっか！？TV」（フジテレビ）など、テレビでも活躍中。