【Ｊリーグ】ザッケローニ監督の眼前でベテランが放った光。ナビスコ杯4強が決定

 　ナビスコカップの取材へ行くと、報道受付で必ず、ニューヒーロー賞の投票用紙が渡される。

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ニューヒーロー賞とは、ナビスコカップで最も活躍した若手選手（開幕の３月31日時点で23歳以下）を表彰するもので、我々取材者には受賞者を選ぶ貴重な１票が、１試合取材するごとに与えられるわけである。

ちなみに私は、いつも勝利チームのなかからひとりを選んで投票することに決めている。９月８日に行なわれた準々決勝第２戦、川崎対鹿島の試合後もまた、そのつもりで投票用紙を前にペンを持った。

ところが、である。

勝った川崎のメンバー表を見て、困ってしまった。この試合に出場した全14選手（先発11名＋交代３名）のうち、対象年齢の選手がヴィトール・ジュニオール（23歳）しかいなかったからである。

もちろん、ニューヒーロー賞の選考に外国籍選手は対象外というルールはない。

まして、この日のヴィトール・ジュニオールは、川崎の準決勝進出を決める３点目（このゴールで２戦合計で４対３となった）を叩き込んでいる。投票するのに何の問題もないし、実際、彼に投票した。

しかし、賞の主旨から考えても、やはり、それ相応の活躍を見せた日本人の若手選手に１票を投じたい、というのが正直な気持ちである。

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それを考えると、活躍うんぬんという以前に、そもそも若手と呼べる選手がピッチに立っていないという状況に、一抹の寂しさがなかったわけではない。

だが、この川崎対鹿島の準々決勝は、見方を変えれば、「ベテラン健在なり」を存分に堪能した試合でもあった。

まずは、小笠原満男。

攻守両面で多くの局面に顔を出し、巧みに体を入れてボールを奪うと、的確にパスをさばく。その上、浮き球をダイレクトボレーでとらえるという高難度のシュートで、一時は同点に追いつくゴールまで決めて見せるのだから、文句をつけようがない。現在のＪリーグを見渡して、これほど貫録のある選手をあまり見かけない。

ただし、この試合に関して言えば、２度の警告で退場になったのはいただけなかった。

そして、もうひとりが中村憲剛。

２戦合計で同点（３対３）となるゴールを、こちらもまた、豪快なミドルシュートで叩き込んだ。

この試合の前日、日本代表として大阪でグアテマラ戦に出場した中村は、高畠勉監督に「先発で行くか」と聞かれたが、さすがに「無理です」と答えたという（高畠監督も「冗談で聞いてみただけ」とのことだったが）。

高畠監督が「昨日はロスタイム含めて10分しかプレイしていないし、今日も30分だけだから、もっとできるかと思ったけど、さすがにしんどいのか、動けていなかった」というほど、中村が本調子でないのは明らかだったが、それでもスーパーサブとして決定的な仕事をするあたりは、さすがである。

小笠原（79年生まれ）、中村（80年生まれ）ともに“アラサー”世代。ベテランと括ってしまうのは、早すぎるかもしれない。

だが、呼び方はどうあれ、チームを引っ張る経験豊富な選手たちが、こうしてそつなく仕事をこなすのは、見ていて実に頼もしい。

怖いもの知らずの若手がハツラツとしたプレイを見せてくれるのは、もちろん楽しいが、小笠原や中村のような選手が熟練の技を見せてくれるのも悪くない。

それができるのは、決して小笠原や中村だけではないはずだ。

2014年に向け、期待の新戦力というと、どうしても若手ばかりに注目してしまいがちだが、年齢を理由に貴重な戦力を見落としてしまってはもったいない。

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この試合を視察に訪れた日本代表のザッケローニ新監督もまた、ベテランが放つまばゆい光に、きっと目を奪われたに違いない。